Chrome と Chromium は同じエンジンを共有しており、違いはコーデックのライセンス、DRM コンポーネント、自動更新、テレメトリ、アカウントサービスに集中している。両者のバージョンの進み方とライセンスの違いを項目ごとに説明し、一般ユーザーとクリーンなエンジンを必要とする人がそれぞれ何を選ぶべきかを示す。
Chrome と Chromium の画面はほとんど同じで、メニュー、ショートカット、拡張機能の仕組みまで一致している。そのため、両者が別物だと初めて聞くと少し意外に感じる。両者を分けているのは目に見えない部分だ。コーデックのライセンス、DRM コンポーネント、更新チャネル、テレメトリ、アカウントサービスである。
一方はプロジェクト、一方は製品

Chromium はオープンソースプロジェクトで、2008 年に Chrome とともにオープンソース化され、コードは自前のリポジトリで管理されている。公式な意味での正式リリースはなく、ダウンロードできるのは継続的にビルドされたスナップショットで、バージョン番号はトランクに追随する。Chrome は、Google がこのプロジェクトの上に要素を足してパッケージ化した製品であり、ブランドがあり、リリースのリズムがあり、ポリシーとカスタマーサポートの体制があり、ライセンスとコンプライアンスのコストも負担している。
コーデックと DRM
オープンソースの部品は特許とライセンスの制約を受けるため、Chromium の公式ビルドには通常 H.264 や AAC といったプロプライエタリなコーデックが含まれず、Widevine DRM も入っていない。その結果、開くのに再生できない動画サイトがあり、Netflix や Spotify のようなストリーミングサービスは再生をはっきり拒否する。Chrome はライセンス料を支払い、これらを配布版に組み込んでいる。ただし Linux ディストリビューションはシステムの ffmpeg でデコード能力を補うことが多く、「Chromium では動画が再生できない」は絶対ではなく、具体的なビルド次第である。
更新の方法とバージョンのリズム
Chrome はインストール時からアップデーターを備え、バックグラウンドで静かに更新するため、ユーザーはほとんど気づかない。安定版はおよそ 4 週ごとにメジャーバージョンが 1 つ進み、ほかに毎日更新の Canary、毎週更新の Dev と Beta のチャネルがあり、新しい機能を早く試したい開発者は切り替えられる。Chromium には公式の自動更新がなく、新しいスナップショットは自分でダウンロードして上書きする必要がある。トランクのリズムは Chrome とほぼ同期しているが、ブランド化された安定ブランチはないので、どの日付のビルドを使うかは完全に自分で選ぶことになる。
バージョンの違いは互換性テストで重要になる。Chrome のバージョン番号は明確だが、Chromium のスナップショットにはコミット日しかなく、問題が起きたときに環境を揃えるのが難しい。
自動更新は手間を省くだけでなく、セキュリティパッチがいつ届くかにも関わる。Chrome の脆弱性修正は安定版とともに配信され、ユーザーは意識しないままアップグレードを終える。Chromium を使う人はセキュリティ情報を自分で追い、手元のビルドに修正が入っているかを見極め、いつ新しいスナップショットに替えるかを決めなければならない。その間の空白がリスクへの露出になる。
テレメトリ、同期、アカウント
Chrome は既定でクラッシュレポートと利用統計を送信し、Google アカウントにログインするとブックマーク、パスワード、履歴、拡張機能が同期される。Chromium にはこうしたサービスがない。アカウントのログイン入口もなく、同期のバックエンドもなく、クラッシュレポートも既定では送信されない。ついでに言えば、位置情報、スペルチェック、翻訳のように Google のサービスに依存する機能は、Chromium では組み込みの API キーがないため動作しないか低下する。
一般ユーザーとエンジンをいじる人
一般のユーザーが Chromium に乗り換える理由はない。節約できるわずかなテレメトリデータの代わりに、再生できない動画、同期されないブックマーク、自分で見張らなければならないセキュリティ更新を抱えることになり、割に合わない。Google のサービスにつながりたくないと明確に決めている場合にだけ意味がある。Chromium を入れておいてストリーミングが開かないと不満を言うのは、最もよくある落差の源である。
逆に、クリーンなエンジンを必要とする人は Chromium を選ぶことが多い。フロントエンドの互換性検証では、問題が標準エンジンにあるのかベンダーのパッチにあるのかを確かめたい。自動化スクリプトを書くときは、自動更新に乱されないようバージョンを固定したい。独自の配布版を作ったり二次開発をしたりする人にとっては、そのオープンソースライセンスが欠かせない。困りごとは通常エンジンそのものではなく、ライセンスされた部品の欠落とバージョンのずれにある。だから多くの人が両方を入れる。日常の閲覧は Chrome、テストとスクリプトの実行は固定バージョンの Chromium である。
「Chromium ベース」が示すもの
あるブラウザーが Chromium ベースだと述べるとき、確かなのはレンダリングエンジンと JavaScript エンジンが同じで、ページの挙動、拡張機能のインターフェース、デバッグプロトコルがほぼ同一だという点だ。確かでないのは、プライバシーの既定値、同期のバックエンド、テレメトリの方針、更新チャネルであり、上流から何バージョン遅れているかも分からない。この一言だけでブラウザーを選ばず、上流に対して何を変え、何を外したかを見るべきである。同じ理屈で、Chrome と Chromium の比較も画面が似ているかどうかで止めるべきではない。比べる価値があるのは、入っているかどうか、つながるかどうか、自分で更新するかどうかという部分である。


