広告アセットの問題は、配信テクニックよりも所有関係や権限設計の不備から起きることが少なくありません。Business Manager配下の階層、制限時の影響範囲、クライアントアセットを誰が所有するかを整理することが、単にアカウント数を増やすより重要です。
広告運用を続けていると、本当に困るのは特定のアカウントが停止されることそのものではなく、停止後になって複数のアセットがすべて結び付いていたと気づくことだと分かります。この構造を整理するには、まずBusiness Manager(BM)の配下に何があり、それぞれの所有関係と権限がどう決まるのかを理解する必要があります。
個人アカウントからBMの階層へ
個人アカウントは、この構造全体への唯一の入口です。BMを作成したり、他の人から送られたBMへの招待を受けたりするには、まず個人アカウントが必要です。個人アカウントが停止されると、その本人として構造へアクセスする手段は失われますが、BM内のアセット自体が消えるわけではありません。BMに別の管理者がいれば、その管理者は引き続き操作できます。
多くのチームがここで問題を抱えます。BMの管理者が1人しかおらず、しかもその人がサブの個人アカウントでBMを作成しているケースです。
BM配下のアセットは誰のものか
広告アカウントは、実際の広告配信と請求の単位で、特定のBMに紐づきます。1つのBMに複数の広告アカウントを持たせることができ、それぞれの予算と設定は互いに独立しています。一般に、広告アカウントを1つのBMから別のBMへ直接移すことはできず、新しいアカウントを作成して改めて権限を付与する必要があります。
ページは、広告で外部に表示される主体です。所有形態は、BMが所有する場合と個人が所有する場合があります。個人所有の場合でも、広告アカウントにページの利用権限を付与できますが、所有権そのものは個人に残ります。
ピクセルとデータセットはコンバージョン計測を担い、オーディエンスと商品カタログはターゲティングや広告素材の運用を支えます。これらのアセットはBMが所有し、BM内の複数の広告アカウントに割り当てて共有できます。
関係を簡単に言えば、個人アカウントが鍵、BMが容器、広告アカウント、ページ、ピクセル、オーディエンス、カタログがその中のアセットです。誰がアセットを所有しているかによって、問題発生時に誰が異議申し立てや移管を行えるかが決まります。
問題が起きたときに一緒に影響を受けるもの
個人アカウントが無効化された場合、最も直接的な影響は、その本人としてBMにログインできなくなることです。BMに他の管理者がいれば業務は継続でき、無効化された個人アカウントだけを個別に異議申し立てできます。
広告アカウントが停止された場合、影響を受けるのはそのアカウントの配信と過去データです。ページやピクセルは通常、直接は影響を受けません。新しい広告アカウントを作成し、ページとピクセルの権限を付与し直して配信を続けることができます。
ページが制限または停止されると、そのページに紐づくすべての広告が影響を受けます。どの広告アカウントに属しているかは関係ありません。これはアセットを混在させたときに起きる典型的な問題です。
ピクセルやデータセットに問題が起きると、コンバージョンデータが途切れ、広告最適化も機能しにくくなります。新しいピクセルを作れば計測は続けられますが、過去データは引き継げないため、学習とアトリビューションはやり直しになります。
BM自体が制限された場合は影響範囲が最も広く、配下の広告アカウント、ページ、ピクセルがまとめて操作入口を失います。この場合は公式の手順に従って異議申し立てを行います。結果は、アセットの所有関係が明確かどうか、規約違反の広告配信履歴があるかどうかに大きく左右されます。
クライアントアセットを別所有にすべき理由
クライアントの広告を運用する際、相手のページやピクセルを自社BMの配下に置くと短期的には楽ですが、長期的にはリスクになります。自社BMに問題が起きれば、クライアントのアセットまで巻き込まれます。契約終了時にアセットを返そうとしても、権限階層のために手続きが止まることがあります。
より安定した方法は、クライアント自身にアセットの所有権を残し、運用側の事業主体をクライアントのBMに追加して、プロジェクトに必要な範囲だけ権限を付与することです。クライアントごとに1つのBMを使うか、少なくともクライアント単位でグループ化すれば、アセットの境界が明確になり、どの問題が誰に影響するかも分かりやすくなります。
権限とログイン環境
BMのロールには管理者と従業員があり、権限の粒度が異なります。原則は必要最小限です。広告運用担当者に予算権限は不要で、データ担当者にクリエイティブ変更権限は不要です。操作ログを定期的に確認すれば、誤操作にも早く気づけます。
環境側では、誰がどこからログインするかを整理します。特に所有主体が異なる広告アカウントを、同じブラウザ環境に詰め込まないようにします。複数人で多数のアカウントを共同管理する場合は、PurpleMarkで各アカウントに独立した固定のブラウザ環境を用意し、ロールに応じて割り当てます。そうすれば、アカウントの所有関係とログイン環境の対応が崩れにくくなります。
構造を整理してから初めて、複数アカウント運用を考える意味が出てきます。


